ワクチン開発状況

ワクチン候補は 70 以上が開発中．多くは基礎研究や動物実験の段階だが，既に第 1 相（ヒトに投与した臨床試験の初期段階）に入っているものもある．

会社名	国	方式	第1相 試験開始	承認	WHO緊急使用 リスト登録
Pfizer, Inc. BioNTech BNT162b2	アメリカ	mRNA	2020-04末予		(1) 2020-12-31
AstraZeneca University of Oxford ChAdOx1 (AZD1222) VAXZEVRIA Intramuscular Injection バキスゼブリア筋注	イギリス	ウイルス ベクター		2020-12-30 [11]	(2) 2021-02-15
Johnson & Johnson 子会社 Janssen Pharmaceutical	アメリカ		2020-09予		(3) 2021-03-17
Moderna, Inc. Moderna mRNA-1273	アメリカ	mRNA	2020-03-16		(4) 2021-04−30
SINOPHARM 中国医薬集団（国有企業）傘下 中国生物技術（CNBG）	中国				(5) 2021-05-07
Sinovac Biotech Ltd. 科興控股生物技術	中国				(6) 2021-06-01
Cansino Biologics, Inc. 康希諾生物	中国		2020-03-17	2021-02-24
Sputnik V	ロシア	ウイルス ベクター		2020-09-04
Sputnik Light	ロシア	ウイルス ベクター		2021-05-06
Inovio Pharmaceuticals	アメリカ		2020-04-06
Novavax, Inc.	アメリカ		2020-05予

• COVAX
  • 途上国にワクチンを公平に配分するための国際的枠組み．
• Moderna, Inc.
  • アメリカのバイオベンチャーでインフルエンザやジカ熱などのワクチン開発の専門集団． 遺伝子工学からのアプローチ． ウイルスを使わず，ゲノム情報からワクチンを化学合成する．
  • 2020 年 03 月 16 日，ワクチン候補を人に投与．
• AstraZeneca
  • VAXZEVRIA Intramuscular Injection（バキスゼブリア筋注）
  • Recombinant Chimpanzee Adenovirus Vector（遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター）方式
  • WHO緊急使用リストに Serum Institute of India 製ワクチンというのも載っているが，これはAstraZeneca製ワクチンのライセンス生産品なのでリストにはあげていない．
• Sputnik Light
  • 1回接種でよいように改良した Sputnik V の簡易版．
  • 1回接種で 79.4% の有効率を示す（ただし大本営発表 ^_^;）．

ワクチンの現況

• ファイザー社製ワクチンは 95%，モデルナ社製 94%，アストラゼネカ社製 82% と非常に高い感染予防効果を発揮している．
  • インフルエンザ ワクチンの予防効果は 30 〜 60%．
  • 変異株に対する効果が低いことが懸念されていたが，N501Y 変異株（イギリス株）についてはファイザー製 94%，モデルナ製も同等，アストラゼネカ製で 70% と十分に高い効果を発揮している．

治療薬・ワクチン開発が失敗に終わる可能性

• 抗ウイルス薬は，HIV，インフルエンザ，B型・C型肝炎など限られた感染症に対するものしか開発されていない． SARS，MARS とも抗ウイルス薬の開発には成功していない[10]．
• SARS，MARS ともにワクチンの開発には至っていない[10]．
  • SARS はワクチン候補の臨床試験がはじまる前に終息．
  • MARS は感染拡大が緩やかだったため，ワクチン開発に資金を費やすのが合理的ではないとの判断で開発が行われなかった．
• 新薬の開発には基礎研究からはじめて通常 9 〜 17 年程度の時間がかかる．臨床試験の第 1 相からでも 4 〜 9 年かかる．今回の COVID-19 治療薬では 第 1 相が完了しないうちに 第 2 相を開始するなどの特殊な手法を使って短縮を図っているが，数年かかる可能性が高い．また，数年かけて失敗の可能性も十分にある．
• 動物実験ではワクチン接種しても効果が不十分で，逆にウイルスに感染した際に過剰な免疫反応がでてしまい症状が悪化するケースが見られた．

参考文献