治療薬

治療薬・治療薬候補

• レムデシビル
  • # 初の承認薬だけど，重症患者向けすぎて普通の人が求めている治療薬とはちがう感じがする…．
  • ウイルスの RNA ポリメラーゼを阻害する作用があり，SARS-CoV-2 にも効果がある．
    • 基本的には重症患者，特に人工呼吸器やECMO（体外式膜型人工肺）を使用している患者に対してのみ使用（日米共通）[10][13]．
    • 点滴で投与．点滴なので人工呼吸器につながっている患者にも投与可能．
    • 回復にかかった日数がレムデシビル使用群で 11 日，プラセボ群で 15 日[12]．
  • 2020年5月7日 COVID-19 治療薬として特例承認された[13]．
    • 2020年5月1日にアメリカで「緊急使用許可」（Emergency Use Authorization; EUA）取得．これにより新型コロナウイルス治療薬 第1号となった[10][12]．
    • 申請から承認までわずか3日，審議会は Web 開催という異例ずくめのプロセスだった[13]．
    • レムデシビルはアメリカで開発されている薬だがアメリカでは まだ特例使用許可 (EUA) の段階のため，特例とはいえ承認したのは日本が世界初[13]．
  • アメリカ国立衛生研究所 (National Institute of Health; NIH) 主導で臨床試験中．日本も参加．
  • 培養した細胞に新型コロナウイルスを感染させ，48時間後のウイルス増殖に及ぼす効果を評価した場合に，最もよい効果が確認されている．
  • 重症患者 53 人に使用し，36 人で症状の改善が見られたとのこと．
  • GILEAD が中国でおこなっていた臨床試験では有意な改善が見られなかったとの報告もある[7]．
• アビガン
  • インフルエンザ治療薬でウイルスの増殖を防ぐ効果がある．
  • 中国科学技術省が有効性を示す臨床試験の結果が得られたと発表して話題になった．が，その後，発表論文の一部が取り下げられている．
  • 現在 臨床試験中，2020年6月末終了予定．
  • 重大な副作用が多いのが問題点[14]．
    • 催奇形性　動物実験で マウス，ラット，ウサギ，サルの すべてで催奇形性が認められている．
    • 異常行動
    • 下痢 5 %，皮疹，高尿酸血症 5 %，肝・腎機能障害．
    • COVID-19 への適用では 30 % 程度の患者に何らかの副作用が見られるとの報告もある（まだ医療現場の感覚的な数値）．肺炎像が悪化する例も見られるとの報告がある．
• フサン（ナファモスタット）
  • 感染の最初の段階であるウイルス外膜とヒトの細胞の細胞膜との融合を阻止することで細胞内への侵入を防ぐ効果が期待される[8]．また，フサンには血液が固まるのを防ぐ効果もあり，一部で COVID-19 悪化の要因として報告されている血栓ができる症例にも効果が期待できる[9]．
  • 古くから急性すい炎などの治療薬として使用されてきた薬で，安価で安全性について十分な臨床データがある[8]点が大きなアドバンテージ．
  • 2020年05月08日に臨床研究がはじまった．
• イベルメクチン
  • 北里大学の大村智博士が 静岡県伊東市のゴルフ場近くで採取した土壌から発見した菌をもとにつくられた駆虫薬． 大村博士はこのイベルメクチンにより2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞．
  • なぜ新型コロナウイルスに対する作用機序は2021年2月の時点では明確になっていない．
  • 駆虫薬として全世界で3億人超が使用した実績があり安全性が高く，投与も1回でよいため使いやすいという特徴がある．
• ロナプリーブ
  • 抗体医薬品のカシリビマブ，イムデビマブの混合薬．複数の抗体医薬品をまぜているため，通称「抗体カクテル」と呼ばれている．
  • 正確な価格は公開されていないが，1回の点滴で4万円以上かかるといわれている（2021年07月28日時点）．当初は1回数十万円〜数百万円かかっていた．
  • 日本では中外製薬がライセンスを取得．

抗体医薬

感染して回復済みの人から採取した中和抗体（Neutralizing Antibodies）を利用する．

• 下記の2社が治験を推進中．
  • Regeneron Pharmaceuticals, Inc. （リジェネロン）
  • Eli Lilly and Company （イーライリリー）
• トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した際に使用し，高い効果をあげたことで有名になった．
• 費用が非常に高額な点が問題．
  • トランプ大統領のケースでは 480 万円程度かかったのではないかとの推定がある．

参考資料

• 製薬協 - Q49 「抗体医薬（こうたいいやく）」とは、なんですか。
• 中外製薬 - 抗体医薬品とは？
• 中外製薬 - 抗体治療とは？
• 日経バイオテク - 新型コロナの予防にも治療にも期待される中和抗体医薬 新型コロナの治療は血漿療法から抗体医薬へ（その2） （2020-09-30 千葉丈 国立感染症研究所客員研究員，東京理科大学名誉教授）

血しょう分画製剤

通常の薬とは異なるアプローチとして「血漿分画製剤」[30][31]がある．

• 感染後回復した人から血液から採取した抗体（免疫グロブリン）を高濃縮してつくる薬．免疫グロブリン製剤ともいう．
• 川崎病では標準的な治療手段で 90 % 程度の治癒率がある．…が COVID-19 に対して有効かは これから検証．
• 2020年夏 臨床試験開始予定．
  • CSL Behring，タケダ製薬，Biotest，BPL (Bio Products Laboraory)，octapharma，LFB の共同プロジェクト[32]．
• 日本では血液を原料とする製剤をつくれるのは日本赤十字社のみであることから，有効であることがわかっても供給体制に問題がでる可能性が高い．

参考文献