6腕のヒトデ

6腕のヒトデの写真

ふつう,ヒトデの腕(わん)は5本だと思うのですけど,右の写真に写っているヒトデは6腕です. これって珍しいのでしょうか? 6腕のヒトデについて,何か知っている人がいたら,ぜひ教えてください.

問題の個体についての詳細

写真だけでは分かりづらい項目について,捕獲したときに現場にいた人から聞き取り調査を行いました. 同定の参考にしてください.

捕獲場所と捕獲時の状況

捕獲場所は,境水道(さかいすいどう)の「去ルガ鼻(さるがはな)」です. カレイ釣りの最中に捕獲されたことから, この個体が生息していた場所は水深10メートル以下の浅い砂地であったと思われます. この個体と酷似している5腕のヒトデはカレイ釣りをしていると非常によく釣れるらしく, これまでに少なくとも200匹以上捕獲しているそうです. しかし,6腕のものは初めてで,非常に珍しいとのことです. 1999年4月22日に捕獲しました.

大きさ・色・体の特徴

各部の名称

同種と思われる5腕の個体は,R(体の中心から腕の先までの長さ)が 4センチくらいから最大でRが7〜8センチくらいのものが釣れるそうです (ただし,使用している釣り針の大きさの関係であまり小さな個体は釣れないことに留意してください). 問題の6腕の個体は非常に大きい個体で,Rが7〜8センチ(直径で15〜16センチ)はあったとのことです.

口側(裏側)は淡いクリーム色反口側(表側)は赤褐色のものが多いそうです. 腕の縁に黒い斑点があるかどうかについては記憶があいまいで特定できませんでした(写真を見た感じでは斑点はないように思います).

棘(きょく;腕の縁にあるトゲのこと)は上下2段で, 上側(表面側)の棘は小さめだと思うとのことです(あまりはっきりとは覚えていないそうです). 棘のつき方については右の図を参考にしてください.

棘のつき方(腕の断面図)

追加情報

以上の情報をもとに図鑑[1]で調べると,外見が非常によく似ており,細部を詳細に調べないと区別が付けられない種が4種類見つかります. したがって,上記の情報は複数の種を同一種だと誤解した結果,それぞれの断片的な情報を混同して記憶したために, 事実と異なるものになってしまっている可能性がありますので十分に注意してください. いちばん頼りになる情報は,写真だと思います. 捕獲した実物は捕獲した本人が海に戻してしまったそうなので,手元には写真しかありません.

写真を撮影した当人はかなり正確に覚えているようで, 図鑑[1]に載っているたくさんのヒトデの写真の中から迷わず「モミジガイ」を指して「コレだ!」と言っていました. また,同じページに写真が載っているスナヒトデを見て, 「スナヒトデは陸にあげるとすぐに(まだ生きているうちに)腕がパキパキ折れ始めるが,モミジガイはあまり砕けない. この6腕の個体もあまり砕けない種類のヒトデだった」と自信をもって説明していました.

種の同定結果(暫定)「モミジガイ」かな?

図鑑[1]で調べると,モミジガイの可能性が非常に高いと思われるのですが,いまひとつ確信が持てません. 図鑑に説明されているのと細かな部分において少し違っているようにも思えます. 何より,図鑑には6腕の個体が見られるかどうかについて明確な記述がありません (5腕に限るとも書いてないのですが・・・ この図鑑[1]の他の種の節には「まれに6〜8腕が見られる」のように腕の本数についても説明が付けられていますが, モミジガイの節では腕について言及されていません).モミジガイの特徴は以下の通りです(図鑑[1]p.518を参照).

気になるのは,「棘のうち側縁に近い数本は他より長く〜」という項目と,「口側は淡色」という項目の2点です. 写真を見る限り,棘はそれほど長くないように見えますし,聞き取りした情報では「口側はクリーム色」でした. 淡色とクリーム色は近いようにも思えますが,別の種の節に淡黄色というよりマッチした記述が見られます. しかし,総合的に考えて,このモミジガイが最も近いように思いました.

以下の3つの種は非常に近い特徴をもっていると思われますが,以下にあげる点に疑問があります.

  1. トゲモミジガイ
  2. オオモミジモドキ
  3. クロスジモミジガイ

詳細については図鑑[1]を参照してください.

参考文献


Takashi HATAI
Sep. 07, 1999
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